十三人の刺客


命を、燃やせ




武士道とは死ぬこととみつけたり


葉隠れにある一説、
「武士道は死狂ひなり、一人の殺害を数十人して仕かぬるもの」
この言葉のように太平の世において苦悩する武士とその死に狂っている姿


太平という世の中が侍の存在意義を奪ってしまった
今や威張っているだけで、その存在さえも曖昧になりつつある侍
ただ生きているだけの存在になってしまっているからこそ、
真の侍は自らの死に場所を求め、死ぬ為の大義名分を探している


或る者は民の為に、或る者は主君の為に
己の命を燃やせる場所を心待ちにしている
どちらの側につこうとも、本質的には何も変わらないのである


それにしても、三池崇史と時代劇の相性の良さに驚き!
あのえげつない描写が合戦のリアリティーを与え、かつ物語の強い推進力となっている
途中に差し込む三池崇史印の下世話なギャグや最後の首をひねる展開、吹石一恵の一人二役など
正直に言って、明らかに余計な部分もあるのは事実だが、そこすらも吹っ飛ばしてしまうくらいの面白さ!


また俳優陣の演技もまた見事で、評判通りの稲垣吾郎はまさに怪演だった
ただの極悪非道な存在では終わらず、侍社会の馬鹿馬鹿しさを自覚的に利用する彼の振る舞いは、
彼なりの哲学があり、彼の台詞は共感は全く出来ないが納得させてしまうような説得力がある
それはバットマンのジョーカーしかり、魅力的な悪役には必要不可欠な要素


また、新旧問わず曲者な実力者を集めただけあり、どの俳優も存在感を出している
どの役にも見せ場を与えているので、死に際が酷いのにも関わらず、その死に際すらも格好いいと思えてしまった
特に、侍という運命に翻弄され続ける市村正親と武士の意地を魅せた松本幸四郎の演技は圧巻!
そして何より、松方弘樹の乗馬と殺陣のすごみは、もはや他と比べ物にならないレベル!流石!


ラストシーンが特に印象的で、やっぱり腹を切られると痛いし、死は怖い
だからこそ、冒頭の介錯なしの切腹は本当に辛かった、そしてそれを耐えてまでやる必要があったのだと知る
「痛いと言われましたか」という台詞にあるように、武士は例えそうであったとしても口に出さない
それをラストに対比としても持って来たあたりもニクい!


監督・俳優・脚本がうまくいけば、日本映画もここまで出来るのだ!
改めて、「日本映画やるじゃん!」と思えるアクション大作
はっきり言って、時代劇に恋とか人情とか余計なものはいらないから、
俺たちはこういう時代劇が観たいんだ!ということなのである