悪人


なぜ、愛したのか。なぜ、殺したのか。




見え隠れする深層心理


本当の悪とは何なのか?本当の悪人とは誰なのか?
閉鎖的で行き場の無い九州の片田舎で起こった殺人事件
それをきっかけに巻き起こる人々の悲劇と切な過ぎる程の純愛
朝日の下で海の果てを眺める二人には何が映っていたのか―


九州の田舎の行き詰まった描写が生々しく、窒息しそうなくらいに息が詰まる
その中でゆっくりと地獄へ向かって行く様とその退屈した生活の中で、
人が刺激を求めて破滅へ足を向ける様は目を背けたくなる程辛くて救いが無い
経済的・精神的・肉体的に弱き人々の不器用過ぎるほどの生き様に心が締め付けられる


この作品が扱うのは、ある一方からの情報だけで本当に人を「悪人」と呼べるのか?
彼らの事を僕らは断罪する事が出来るのか?という人の倫理観を問う志の高い作品にも関わらず、
結果的にこの作品における若者描写やメディア描写の扱いが分かり易い程に断罪的になっている


この映画が、誰が「悪人」かを考える映画でないはずなのに、
いつの間にか人を殺した者よりも殺された方が「悪」なのだと誘導尋問されているように感じた
それは何を考えているか分からないと思われてる若者に対する作者の嫌悪感であり、
ラストに向けて柄本明を使ってより強調されて描かれていたのが鼻についた


役者の演技はみな秀逸で、演者の魅力を効果的に演出している
特に満島ひかりの嫌な女具合は強烈!良くも悪くもそのアクが強さが、彼女が一方的な悪として映ってしまった
また、妻夫木聡もポスターの美男子とは想像出来ない冴えなさっぷりを発揮!
ただ、モントリオール映画祭にて主演女優賞を取った深津絵里の演技は確かに素晴らしいのだが、
やっぱりこの役に対しては、もっと不細工な人でないと説得力に欠けるかな?


昨今ありがちな薄っぺらいラブストーリーや心温まる偽善的な人間ドラマなんかを観るより、
この人間ドラマのほうが何倍も価値があるとは思うんだけれども、
途中途中に作者側のエゴが見え隠れしてしまい、それがノイズとなって乗り切れなかった印象