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監督失格


しあわせなバカタレ。




やはり、監督失格


世の中には撮ってはいけないものがある
そして、この作品は間違いなく、その瞬間を写している
ある人の死、そしてそれに直面する人の姿


突然の出来事に慟哭し、感情の全てを曝け出している人の姿は
観てはいけないものを観ているような、背徳感とやり切れなさが胸を締め付ける
それでも、それを表現として公開しているのならば、
セルフドキュメンタリーとして監督をした平野勝之自身がもっと身を切らなくてはならない
もっと自分自身の醜い部分を曝け出さなければならなかったと思う


結論から言えば、この作品は凄い作品だと思う
でも、僕はこの作品を好きになる事は出来ない
それは自分を美化し、曝け出す事の出来ない平野勝之という人物は
僕もやはり監督失格なのだと思う




この作品が林由美香という人物の死とそれに直面する平野勝之の再生を描くドキュメンタリーなのだが、
はっきり言って平野勝之という人物の都合のいいセルフ・ドキュメンタリーに見えてしまった。
なぜなら、この作品で全てを曝け出しているのは林由美香の母親の方であり、
平野勝之自身は、常にカメラを意識しながら自らを語り、本来ならば描くべき自らの不倫の決着も描かずに、
彼はわざわざ腰の悪い時に自転車に乗り、最終的にそれっぽい決着を見せて終わるのだ。


平野勝之という人物を知っている人なら行間は読めるかも知れないが、
パーソナリティーを知らない自分としては、全てがわざとらしくて嘘くさく映ってしまった。
正直、この作品から発せられるメッセージが、「な?俺って可愛そうだろ?」と、
胡散臭い顔で迫られているようで、なんか作品に乗ることが出来なかった。


自分のドキュメンタリーを自分で撮るのであれば、少なからず自らの身を切る覚悟は必要だと思う。
今回、この作品でそこが描かれていないのは「由美香」という作品において、
喧嘩のシーンと涙で謝罪するシーンが撮られなかったように、平野勝之自身の未熟さであり、
結局それが出来ていない時点で、この作品を制作したところで、【 監 督 失 格 】なのは変わらないのである。


呆れ返る程のクズな男のラブレター
林由美香というミュ―ズを激情のままに、生々しくも生き生きとした姿を
これ以上ない美しさでフィルム納めている点は評価できるところだし、
彼女への愛と失ったやるせなさは凄い分かるし、共感も出来るんだけど、
崖っぷちにおいても曝け出しているように思えない平野勝之という監督を
僕は好きになる事が出来ないから、この作品も好きになる事が出来ないのかも知れない。


きっと、この作品で平野勝之という人物に心から同情が出来るかどうかがキモなのだと思う。
でも、もしかしたらこの作品で林由美香という人物に惹かれ、妬いているからなのかもしれない―。