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恋人たち

2015 Movie ★★★★★

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それでも僕らは明日へ向かう





人は誰しも心に「痛み」を持っている。
けれども自分以外は誰もその痛みを見ることは出来ない。


そう、なんでも見えているような気になっていた僕らの見ている世界は、
とてつもなく小さくて、とてつもなく狭いのだ。


光すら当たらない社会の片隅で、それぞれに「痛み」を抱えながら、
三者三様の恋人たちが泥臭くも必死で生きる姿を描く。


ある者はその痛みに絶望し、ある者は痛みをひた隠し、
またある者はその痛みに気付く事なく生きている。


全てがぶっ壊れている理不尽な社会の中で、
彼らが直面する生々しいほどの絶望の数々は、
やるせないほどにリアルで実在感にあふれている。


もしかしたら、彼らは僕らなのかもしれないし、
彼らが目の当たりにする絶望の中に僕はいたのかもしれない。
だからこそ、現実に打ちのめされて、次第に追い詰められていく彼らの姿を見ているのが本当につらかった。


だって、見ることは出来なくても、人は誰しも「痛み」を抱えている事は知っている。
だから、その痛みをまざまざと見せられたら、その心の痛みが痛いくらいに伝わって来るからだ。


そんな刹那でやるせない日常を決して突き放す事なく厳しくも優しい視点で見つめるその鋭い視線は、
僕らの日常でもよくあるようなほんの些細な機微を鋭くえぐり出している。
それは時に悲しく、そして時にそれは可笑しい。
僕らはそんな世界で生きているのだ。


僕らの日常と地続きのようなリアリティーの中で、
もがき続ける彼らは最後まで何か大きな変化がある訳でもない。
それは映画の外で生きる僕らの現実も同じことだ。


だからこそ、アツシの指差す青空や瞳子と夫の何気ない会話が、
そんな世界でも無理矢理に生きることでほんの少しでも何か変わる日常の素晴らしさを表現している。


人には人の生き方がある、それが人生。
それはふと見ただけではわからない、なぜなら僕らの見える世界はとても狭いから。


だからこそ、もしも背負う事のできない闇を抱えている人が目の前にいたならば、
僕は黒田のようなお弁当を持って笑う事を教えられる人間になりたい。
この映画を見てそう思った。