Don't Breathe:ドント・ブリーズ

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ナメてた相手が最強だったシリーズ:盲目ジジイ編


窃盗の理由は人それぞれ。人生いろいろ、泥棒もいろいろ。
けれども、人の物を盗む事で自分の幸せを手に入れようとする、
そんな調子こいたティーンエイジャーどもを恐怖のどん底へ叩き落す、
湾岸戦争で光を失い、交通事故で娘を失った悲しき老いた帰還兵という名のモンスター!


「ゴーストタウンの一角に、大金を隠し持った盲目のジジイがいるらしい」
調子ぶっこいたデトロイトのどんづまりの若者たちは、
盲目の老人の家の強盗というベリーイージーなゲームを前にして、
1万ドル以上の窃盗+銃器の所持という、越えてはいけない一線を越えてしまった…


「この簡単な大大勝負に勝利して、この街なんかオサラバするの!」
身勝手すぎる野望は、この最強のモンスターを前に木端微塵に砕かれる!
ランボーベトナム戦争が生んだモンスターなら、彼は湾岸戦争が生み出したモンスター!
そのしぶとさたるや、ターミネーターさえも凌駕する…!?


靴の内側のにおいで男と女をかぎ分ける驚きの嗅覚!
息をする音ですら聞き分けてしまう、ものすごい聴覚!
こいつ、イラクでどんな事してきたんだ!?


そんな最強のモンスターに「盲目」というギミックを入れた事で、
絶望な状況でもギリギリ生き延びる事が出来てしまう余地を持たせながら、
色んな脅かし方で観客を恐怖のどん底へ突き落す!新感覚ホラー映画。


「暗闇」「沈黙」などのアイデア一発勝負だけなように見えて、
カット割を意識させない、カメラワークもきらりと光る。
初っ端のドローン空撮に暗闇での攻防を遠赤外線カメラで表現したのも見事だったし、
さらに家の中に入った時の3人の位置関係をカット割らない感じで表現している感じもまた良い!
そして、盲目の帰還兵が登場してきてからは、「クロックタワー「サイレン」といった、
どこかスリラーゲームっぽい視点の移動も個人的にフレッシュで良かった。


どん詰まりのデトロイトの貧困地区で、家庭内暴力や組織といった底辺に生きる若者が、
大金を手にして都会へ羽ばたいていくという設定とはいえ、主人公たちがやる事は強盗なので、
感情移入出来ず、むしろ娘を亡くした孤独な盲目のモンスターに感情移入してしまったのだが、
途中でこの家の地下室を見つけた瞬間から、さらに物語を混沌させる驚異の展開へ!


娘が消えたのなら、また作ればいい


かわいそうに思えていた湾岸戦争の帰還兵は、
そんなアウト過ぎるポジティブ論を展開しながら、
冷蔵庫にあの液体を隠し持つ最狂のモンスターを目の当たりにして…


だめだ、こいつ…
早くなんとかしないと…



哀れな盲目の帰還兵から、一気にマジキチ・モンスターへ!
そのせいで、登場人物だれも感情移入が出来ないまま、恐怖だけが加速していく!


「おいおい、おれは誰に感情移入すればいいんだよ!?」
しかも、そのモンスター…ちょっとやそっとじゃ死なねーんだ、これが!
何度倒そうとしてもまた立ち上がる、そんな地獄のような時間が過ぎていく。


実は直接的にグロい描写はそこまでないんだけど、きっちり怖い。
映像で怖がらせるというよりは、精神的にドンドン追い詰められていく感じ。
映画館の空気を見事なまでに凍らせる恐怖体験!


盲目の人間がどうやって人を誘拐するんだよ!!
なーんて野暮な突っ込みを思いつつも、フレッシュなアイデアを駆使して、
ここまでの極上シチュエーション・スリラーに仕上げた手腕に拍手。
そしてホラー映画らしく88分という、何ともちょうど良い時間でまとめ上げたエラさにも脱帽!


もう「死霊のはらわたのリメイク撮った監督」とは言わせない!
全米でスマッシュヒットしたのも、十分納得できる極上B級シチュエーション・ホラー作品だった。